今さら言うまでもないが、日本という国は、世界的に見ても、全く特異なサブカル文化を形成してきた国である。
もっとも僕は、世代的なこともあってか、特別、オタク文化のようなものに影響を受けた気はしていない(基本的にアニメは嫌いだし)。
が、しかし、震災前やリーマン・ショック以前ははっきり別世界だったと思う。
消費やメディアをめぐるゆるさ≠ェ格別であった。
一口に言えば、何かを(つまり金と時間を)強烈にもて余し、素晴らしく刹那的な狂騒を演じてきたわけだ。
バブル以降を失われた20年などと言うが、実は日本人の本質とは、あの、いにしえの水泡から一歩も出ていないようにも思われる。
さて、かつて、そんな我が国の文化を彩ったものの中でも、とくべつ奇異で、不可思議なムーブメントといえば、何と言っても、「食玩ブーム」ってのがあった。
ところで、僕は年を経る毎に何かモノ≠所有することの負担に嫌気が差す一方である。
そういう意味では圧倒的にデータ主義だ。
実際、漠然とだが、自分の死後、必然的に遺された品々の行く末を、今からもう、憂い始めてさえいる。
したがって、コレクション欲のようなものも、昔に比べたら全く希薄な状態だ。
が、そんな僕でさえ、かつてポイポイ大人買い≠オてしまったあれ≠ェ、そこそこ、貴重な居住スペースを陣取っている。
それこそ「食玩」…。
僕は、世の殆どの人たちと同じように、取り立ててこうしたもののコレクターというわけではない。
しかしながら、最盛期の頃には、例の「中野ブロードウェイ」にまで足を伸ばし、なんだかんだでそれなりに溜め込んでしまった。
そもそも食玩とは、グリコのおまけブームを遥か前段とすれば、80年代に端を発するガンプラ・ブームやガレージ・キット、また、90年代のガシャポンや美少女フィギュアという伏線を経て、直接には海洋堂が原型制作した「チョコ・エッグ」あたりからブレイクした、と言われている。
そうして現在はというと、ご存知のように、すっかり下火となり、加えて、コスト面での欠くべからざるパートナーであった中国との不調和、つまり、かねてから高騰傾向にあったと言われる外注費問題に加え、このところのきな臭い情勢の中で、益々もって、かつての「食玩」の黄金期も、遠い過去のものとなりつつある。
勿論、今日、過去を懐かしんでばかりもいられぬ我々だが、しかし、現に、相変わらず僕の部屋の一角を我が物顔にしている、この小さな樹脂の塊たちを、どのように処遇すればいいものか?(これから物を収集しようという気持ちがサラサラ無い代わりに、物を捨てたり売ったりする意欲も無い僕である)
もっとも言うまでもなく、食玩の中の多くのものは、恐るべき造形力と精度によって、このスケールの限界レコードを遥かに超越した、歴史的プロダクトに間違いないと思う。
これをほっぽらかして、年に一度も鑑賞しないというのは、我が国が誇る創り手達に対して申し訳がない。
そんなわけで、この際、ぐっと鑑賞し易いように、記念写真でも撮っておくか、と思い立った。
そうだ、それがよか!これで細部のデテールがどれ程のものか、その、クリエイティブ・スピリットの空恐ろしさまで実感できるってもんだ!
またその向こうには、例によって、どこか切ない時代の無常観がたちあらわれたりして…。
いつか来た道は即ち、二度とは還らない道なのである。
私にとっても、人々にとっても…。
曰く、食玩ブームは、盛者必衰のことわりをあらわす!