Longtail`s Cafe 昨日までの言霊

vol,6

リリー、俺帰ろうかな、帰りたいんだ。どこかわからないけど帰りたいよ、きっと迷子になっ たんだ。もっと涼しいところに帰り
たいよ、俺は昔そこにいたんだ、そこに帰りたいよ。リリー も知ってるだろ? いい匂いのする大きな木の下みたいな場所さ、
ここは一体どこだい? ここ はどこだい?
喉の奥が焼けるように乾いている。リリーは首を振って残ったブランデーを自分も飲み、もう だめだわ、と呟く。僕はグリーン
アイズのことを思い出した。君は黒い鳥を見たかい? 君は黒 い鳥を見れるよ、グリーンアイズはそう言った。この部屋の
外で、あの窓の向こうで、黒い巨大 な鳥が飛んでいるのかも知れない。黒い夜そのもののような巨大な鳥、いつも見る灰色
でパン屑 を啄む鳥と同じように空を舞っている黒い鳥、ただあまり巨大なため、嘴にあいた穴が洞窟のよ うに窓の向こう側で
見えるだけで、その全体を見ることはできないのだろう。僕に殺された蛾は 僕の全体に気付くことなく死んでいったに違いない。

村上龍 『限りなく透明に近いブルー』より

果実は枝についたまま刻々しわがより軟らかくなっている
やがて表皮にしみが広がり動かぬ空気に醗酵した香りが漂う
私に見えているものを他の人も見てるのだろうか
マルメロの実が光のもとで熟れて腐っていく
その光は鮮烈なのに陰を帯びすべてを鉱物と灰に変える光
それは夜の光でもなく…黄昏の光でもない 夜明けの光でもない

ビクトル・エリセ監督作品 映画『マルメロの陽光』より

狂おしい夏だった
手に触れる すべて
欠片の死のように
君の血が透き通る
野蛮な 瞳 見ては
途方に暮れる 真夏の楽園

坂本龍一売野雅勇 作詞  『美貌の青空』より

数年後 長旅の末クローディアの母が一人娘の永眠の地を訪れたが
父と子供たちの姿はなく西海岸で商売に成功したとのうわさを聞いた
母にはどうして一人娘が酒浸りで残忍な札付きの悪党と結婚したのかついに分からなかった

クリント・イーストウッド監督作品/岡田壯平 訳 映画『許されざる者』より

俺達は帆船のジョンB号でやって来た
じいさんと俺で
俺達はナッソーの町を歩き回った
飲みあかし、ケンカに巻き込まれた
もうクタクタさ、家に帰りたいよ
ジョンB号に帆をあげろ
風をいっぱいに受けた
メインセイルを見てみなよ
陸にいるキャプテンを呼ぼう
故郷に帰しておくれ
故郷に帰りたい
どうして帰してくれないんだい、yeah,yeah
もうクタクタさ
家に帰りたいよ

ザ・ビーチ・ボーイズ/kuni Takeuchi 訳 『スループ・ジョン・B』より

ぼくは写真の基本というのは報道だと思っている。ここにこんなものがありましたよ、という ことを人に知らせる手段。そこから発展していろいろな写真表現が生れるわけだが、基本はそう いうリアリズムだろう。
カメラで写すことは、そこに見えるものをフィルムに移すわけで、鏡に映るというのも、そこ に見えるものが鏡面に移るということなのだ。
ぼくがここで写真を見ていく態度としては、そういう写真、それを見る、という原点からでき るだけ外れないようにした。写真作品として見るというよりは、そこに写されているものだけを 見て書くようにした。いいかえれば、できるだけ子供の目で見るように努力したのだ。

赤瀬川原平 『鵜の目鷹の目』より

惣三郎め おとこまえ過ぎた
男供に嬲られてる間に化け物が住み着いたんだろう

大島渚監督作品 映画『御法度GOHATTO』より

地獄とは何の目的もなく生きることだ
だが俺は這い出た
そのために女を1人失ったが
おかげで俺は地獄から抜け出した

ロバート・ロドリゲスフランク・ミラー監督作品/林完治 訳 映画『シン・シティ』より

感傷的で悪かったな
少しぐらい勉強ができるからって いい気ンなるなよこの野郎!
あれも戦争これも戦争
どこで死ぬかぐれーは手前の趣味を通してェ

矢作俊彦大友克洋  『気分はもう戦争』より

ドロの山をおりると 無人のブルドーザーがにらんでるよ
君は辺りを見まわし「まるでSF映画ね」 とつぶやいた
君は少しでもうみに近づこうと歩いてるよ
僕は疲れてタバコに火をつける

君と僕とのうみさ
ぶった切られたうみさ
魚のいないうみさ
アスファルトのうみさ

真心ブラザーズ倉持陽一 作詞 『うみ』より

空写真
線画写真
モノ01写真
モノ02写真
林写真
オレンジジュース写真
さらに前のコンテンツを読む