つよし 「先生、質問があります!」
私 「ふむ、何だね?」
つよし 「以前、ティービー観てたら山田五郎が、ただの美術よりはエロい美術の方が良いに決まってる。そっちの方が二度おいしいからだ!とか何とか言ってたんですけど、それは本当ですか?」
私 「うーむ。中二のくせに、中々、渋い発言に着目するじゃないか。まあ、その質問の結論から言えば、それはYESだ。ああ、イエス・オフコースだともさ」
つよし 「えええええっ!それじゃあ、一見、高尚に見える、社会問題を孕んだ表現とか、もしくは平山郁夫大先生や千住博画伯のような、美しく静謐で、それでいてマッタリとした荘厳な威厳に満ち、それでいて、それでいて…、兎に角、そんな真っ当な美術より、単に如何わしくヘンタイなエロ・アートの方がびっくりするほどユートピアで、そして、そしてこれからその一端を僕たちに紹介してくださるんですね」
私 「おおよ。そんなこと一言も言ってないけど、その通ーり!しかしまあ、エロと喧嘩に能書きはいらねえ。先ずはこれを見さらせ!」
つよし 「うはっ!これはまた直球にして根深いエロスですぅ〜。既にナイスですね!≠フ波が何度も押し寄せてきそうな…」
私 「この画家、ジョン・カセールはもっぱら女性の下半身ばかりをフィーチャーした、ばかにフェティッシュな偏執野郎なのだ。ランジェリーの質感と女体の弾力感にのみ延々、肉薄し続ける画家の頭の中が、すっかりト・レ・ビ・ア〜ンであったろうことは想像に堅くない」
つよし「トレビア〜ン…???」
私 「チッチッチ。この際、考えるんじゃない!感じるんだ!」
つよし 「ははー、エロお師匠さま!」
私 「迷えるしもべよ、リピート・アフター・ミー!」
つよし 「????」
私 「ンムハ〜、ンムハハハハハ〜ン」
つよし 「ンムハ〜、ンムハハハハハ〜ン」
私 「ムッチムチのピッチピチのもーりもり。うふっ!」
つよし 「ムッチムチのピッチピチのもーりもり。うふっ!」
私 「おっぱっぴーでチゥ〜、チチクリマンボウでキュッキュ〜!!」
つよし 「おっぱっぴーでチゥ〜、チチクリマンボウでキュッキュ〜!!」
私 「ぷりぷり県!ぷりぷり県!ぶるるん、ぶるるんして応答願います!」
つよし 「ぷりぷり県!ぷりぷり県!ぶるるん、ぶるるんして応答願います!」
私 「ぷりぷり県!ぷりぷり県!ぶる…」
エリカ 「あたしは置いてきぼりかよ」
つよし 「おお〜っ!こっちはうって変わってキャワイイ〜っ。さっきのに比べると、あんまエロくはないですぅ〜」
私 「この写真集は、日常風景の中に突如現れた半ケツ≠ニいう着想が素晴すぃい。半ケツ、つまり、抑制された恥じらいのエロスが、見慣れた風景の中に潜む淫靡な気配を炙り出す。そして同時に、これは写真特有の、環境そのものを見つめる時代の証言(記録)でもあるわけだ」
エリカ 「ふ〜ん。一概にエロチック表現といっても、マッタリ・ドロドロしたものもあれば、こんな乾いて、むしろキュートな味わいのものもあるわけね…」
私 「おまいは栗田ゆう子かっっっ!」
私 「エロい芸術写真というと、正直、枚挙にいとまが無いわけだが、中でもワシはこの人、ヘルムート・ニュートンを強くお薦めしたい!」
エリカ 「先生!必ずしも、もろ、チンコマンコって感じじゃないけど、なんかこう、ムラムラしま〜っす」
つよし 「何だかわからないけど、セレブリチ〜なエロの匂いがするよ」
私 「合格っ!しかし、お前らチューニの分際で成長著しいのう。よかよか。ところで、この写真家の世界とは一口に言うと、ヨーロッパの伝統的階級社会に潜む差別感情や頽廃のムードを、インモラルな性のイメージから読み解く、要するにこれがデカダンス≠ニいうものなのだ。リアル・SMなのだ」
エリカ 「不思議とデヴィ婦人を連想してしまうわ!」
私 「こうした、様式とメンタリティーにまつわるエロこそ実は奥が深く、真にイヤラシ〜ものなのだ」
つよし 「今だにメイドさんや執事は大人気だい!」
私 「そういう意味では、君たちはまず、マルキ・ド・サドの『悪徳の栄え』や『O嬢の物語』といった原典をチェキ!のこと」
つよし 「そんなのより、いきなり『家畜人ヤプー』が読みたいよう」
私 「シャーラップ!」
つよし 「どひゃー、エロい〜!エロ過ぎるよう!」
エリカ 「この辺りからはもう、濃厚な変態性が発散され始めてるわーん。ごくり」
私 「前出のジョン・カセールなんかは、変態は変態でも、言ってしまえばただのバカであった。しかし、このモリニエになってくるとどうだ…。カセールが描く表面的な位相とは別次元の、それは凄まじい業≠感じさせるではないか」
つよし 「すげェ!すげェよう!イク、イク〜〜ユ〜〜トピア〜〜」
エリカ 「先生、これは私も超ムラムラしますわ。何だか異常に変態的な内面を感じますの」
私 「うむ。察しが良いな!そう、問題なのは内面だ。言い換えれば、性的妄想の強度なのだ。特にこのモリニエ画伯の場合い、マゾヒズム、ナルシズム、フェティシズム(MNF !)という最も耽溺的な三種の神器を、何れも重度に患っておる。手がつけられぬリビドーのマグマを抱えた、これぞ変態の横綱と言えよう」
エリカ 「言われてみればこれは、男性的な射精感というより、強烈なオルガスムスのイメージがありま〜っす」
私 「おおよ。昨今では、何かとトランス・ジェンダー系のゲイカルチャーがアキバなどにも飛び火し、おまけにやたら一般メディアにまで露出するようになったが、元々、モリニエは自ら異様に扇情的な女装写真集を発表するなど、いわば、ドラッグクイーン的なものの先駆にして究極の体現者なのだ。因みにワシは、単なる同性愛ということ以上に女装≠ェ象徴する男の女性化には、種の保存の原理から言っても、よりタブー性が強いのではないかと睨んどる。そしてだからこそ、越境する者の背徳的快楽もまた強まるのであろう。いやはや、恐るべきは擬態する欲望!」
エリカ 「そういう強度なタブーの匂いを嗅ぎつける心理からヤオイ好きなんかがいるわけね。あたしのことだけど」
つよし 「そういえば『秘密結社 鷹の爪』の吉田くんもやたら女装したがりますよね」
私 「とは言え、まあ、ジェンダーをめぐる妄想も、いい加減、極まりつつあるように見えるがな。何故なら、全ての趣味事は、ひとたび大衆化してしまえば、その先は収束に向かうものだからな」
エリカ 「また、その大衆化をいたずらに加速させてしまうのも、ネット化した消費社会の弊害ですわね、センセ」
私 「チューニのくせに…」
私 「さてと、せっかく女装、マゾヒズム、ナルシズムなんていうキーワードが出てきたわけだから、その流れで、直球のゲイ・アートにも触れておこう。このピエール&ジルはおフランスのゲイ・カップルによる著名なアーティストだ」
エリカ 「ふ〜ん。作品は物凄く綺麗だけど、なんかこう、濃密な愛≠フ空気が、ゲイであるせいか、ムショ〜にイヤラしく、いかがわしいわね。きらびやかさとは裏腹の、強烈な毒を感じる」
私 「モリニエのような変態性欲に根ざしたトランス・ジェンダーを忌み嫌うのは勝手だが、先天的な同性愛者や性同一障害者を差別するのは全く別問題だから、正直、言いづらいわけだけど、しかし、ノンケの感覚からいくと、やはりゲイ・アート、いやいや、このピエール&ジル様の作品などは独特の過剰さを感じるなぁ。異様に濃い〜よなー。つゆだくピエール汁、あんつってなー」
つよし「ふんとだ。すげー毒々しい色だね」
私 「この装飾的でグロテスクなまでの濃密な感性をバロック≠フイメージに掛け合わせ、独自に様式化したことが、彼らのアートとしての発見と成功になるわけだ」
エリカ 「考えてみれば何がそんなにエロいのかわからないけれど、でも何か霞のように漂ってくるエロ・ミストに幻惑される感覚みたいなものがありま〜っす!」
私 「因みにこうした、ある種の魔術的幻惑感に惹きつけられる人は、アレハンドロ・ホドロフスキーの映画など観るとよろしい」
エリカ 「アイアイ・サー」
つよし 「サンキュー・サー」
つよし 「うぅぎゃ〜〜〜っ!チンコと女体がひとつに!チンコとケツが〜〜!ちんちんまんまん!チンコマンコ〜が〜〜〜っ!ひぃぃ〜〜〜っ!」
エリカ 「先生っ!つよしくんのリビドーが破裂しました」
つよし 「お姉さんのウンコを犬が、犬が〜〜〜っ!ひぃぃ〜〜〜っ!」
私 「フム。しかしまあ、無理もなかろう。この林良文という画家先生は、性的強迫観念を描かせたら世界列強に於いても、或いはビッグ・セブンの一翼!我が民族が誇る長門級の強力兵器だからな」
エリカ 「スカトロやらネクロフィリアまで含めて、あらゆるオブセッションに漏れなく斬り込んでいるあたり、日本的生真面目さを感じて素敵っ!」
私 「特にこの人の、フランスに渡って独学で憶えたという鉛筆による細密表現は卓抜した美しさだ。」
エリカ 「Femaleの立場から言わせてもらうと、前に観た『コックと泥棒、その妻と愛人』という映画のラストのセリフカニバル(人喰い)!≠ニ吐き捨てたいような気もしま〜っす!」
私 「どうでもいいことだけど、この林良文を含めて、今回、無作為に選んだエロ・アート7作家中、4作家までが、実に、フランスを舞台に開花したわけだな。まあ、やっぱりな…。」
エリカ 「セ・マニフィック!エロス超大国、おフランス万歳!ですわ」
私 「それはそうと、エリカくん!リビドーが決壊したつよしをFemaleの立場から何とかしてやりなさい」
エリカ 「ウイ!」
つよし 「あ〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっ。可愛い女の子が手足を切られてペットにっ、ペットに〜〜〜〜〜、ぎゃ〜〜〜〜〜〜〜っっっ、ひぃぃ〜〜〜〜っ」
エリカ 「これはまた違った意味で病的というか、サイコパスなイメージですわーん」
私 「この画家の場合い、エロチックなイメージが(恐らく)自然と性的サディズムの方向一辺倒になるところが注目点だ。しかも、これまで観てきたものの中でも全く異質なセクシャリティを持っていることがわかる」
エリカ 「この感じだと、子供の頃から小動物を殺してきました、とか、個人的に潜在する性的トラウマをカミングアウトした表現ともとれますわね」
私 「まあ、とはいってもこの作家は、発言などを見ると、実は表現的模索の中から観念的ロジックに基づいた帰結としてタブー≠ノ肉薄しようとしているふしもあるわけで…」
エリカ 「えええ〜、でも、無いものは描けないんじゃあ…」
私 「もちろん、あるだろうな、それは。しかし、そういう部分の謎も含めて、仕掛けられてゆく芸術もあるってことさ。加えてこの人の場合い、デッサンありきの芸大らしいイカ臭さを逆手に取ったような香ばしさがあって、敢てそんな部分を持ち続けるところが権威に対する捨て身のスピリットを感じさせ、共感を呼ぶようなところもあるわけで…」
エリカ 「そんなことどうだっていいよ!問題はエロいかどうかでしょう?先生」
私 「あっ、そうか!」
つよし 「みきさ〜に〜〜、女の子、みきさ〜に〜、ひぃぃ〜〜〜〜〜っ!」
私 「エロいに決まっとろうがっ!!」
★
私 「さてさて、こうして様々なエロチック・アートを見てきたわけだけど、どうかな?君たち。今後の人生の役には立てられそうかな?」
エリカ 「未成年のFemale的感性からいくと軽く死にたくなりましたが、まあ、ドンマイって感じで、思いっきり歪んだ人生を送れそうで〜っす!」
つよし 「僕は既に深刻なPTSDを発症しましたから、これからは2次ヲタ・ポルノは卒業し、ひたすら性愛のリア充を目指して、濃い〜人生を歩むことを誓います!」
私 「よろすぃー。では最後に、君たちにこの言葉を送ります。Thank you for your attention !
生まれて来なければ よかったなんて
心が つぶやく日は
人ごみに背を向け 会いに行くのさ
なつかしい海に
幼な児よりも ひたむきに
遠い名前を叫んで
汗ばむ心潮風が 洗うにまかせれば
いつのまにか生きることが また好きになるぼくだよ
『ゆうひが丘の総理大臣』EDテーマ「海を抱きしめて」より